Entries

「採点実感等に関する意見」から抜粋(1)

平成20年の司法試験から、論文式試験の答案を採点した試験委員が感想を述べたものが、法務省のホームページにおいて「採点実感等に関する意見」(以下「採点実感」という。)として公開されています。その中から、答案を書く上での一般的な注意事項として、私が気に入っている部分を抜粋しました。昔は、司法試験の問題用紙を持ち帰ることさえ禁止されていたのに、時代が変わって、答案を採点した感想まで公開してくれる時代になりました(後記のとおり、そこには「受験生へメッセージを送る」というコンセプトがあるらしいです。)。もっとも、受験生が公開された採点実感に目を通しているかは別問題で、それがとても残念に思われます。ブログの都合上、レイアウトに気を配っていないことを了解して下さい。なお、赤文字の部分が、個人的に重要であると思うところです。以下、このルールを通していきます。


【平成20年公法系科目第1問から抜粋】
(3) 資料の活用
ア 与えられた資料を精読せず,具体的な事案に即したきめ細かい対応がなされていない。例えば,資料で示された本問に特有の具体的な事情について全く触れていない答案が目立った。解答する上で,資料の活用は必須である。
イ 資料の活用とは,資料に書かれていることを「書き写す」ことではない。ただ漫然と「書き写す」だけの答案は,不適切であり,不十分である。資料のどこの部分をどのように評価したのか,あるいは評価しなかったのか,きちんと説明されていなければならない。

【同科目第2問から抜粋】
2 採点方針
・ 救済手段の選択については,評論家風な解答ではなく,「自己の見解」が示されているか否かを採点に当たって重視することとした。
・ 答案の構成が優れていたり,文章表現が優れ論理性の高い答案など,特に優れている答案には,とりわけ高い評価を与えることとした。
・ 条文の引用が正確にされているか否かも採点に当たって考慮することとした。


【平成22年公法系科目第2問から抜粋】
(4) 設問に答えていない答案について
・ 問題文をきちんと読まず,設問に答えていない答案が多い。
・ 問題文の設定に対応した解答の筋書を立てることが,多くの答案では,なおできていない。
(5) 字が乱雑で判読不能な答案について
・ 字が汚い答案(字を崩す)が多い。時間がないことも十分に理解できるが,かい書で読みやすく書かれている答案も多く,合理的な理由とはならないであろう。例えば,「適法」「違法」のいずれかであることまでは判別できるが,それ以上判別する手掛かりがなく,一番肝心な最終結論が分からないという答案も散見された。
・ 字を判読できない答案には閉口した。字の上手下手があるのは当然であるが,そうではなく,読まれることを前提としないかのような殴り書きの答案が相当数あった。時間が足りなくなって分かっていることを全て記載したいという気持ちは理解できるが,自分の考えを相手に理解させるのが法曹にとって必須の要素と思われ,その資質に疑問を感じざるを得ないように思った。
(6) 答案における文章表現について
・ 一文一段落という,実質的に箇条書に等しい書き方をする等,小論文の文章としての体裁をなしていない例が少なくない。
・ 「この点」を濫発する答案が少なからずあったが,「この」が何を指示しているのが不明な場合が多く,日本語の文章としても,極めて不自然なものとなっている。

【同年民事系科目第3問から抜粋】
5 その他
 毎年のように指摘していることであるが,答案は,読み手が理解できて初めて評価されるものである。受験生は,答案の読み手の立場に立って,分かりやすく記載することを肝に銘じることが必要であり,文脈から記載内容を推測することを読み手に期待することは許されない。字の巧拙は別として,「蓋し」,「思うに」など一般に使われていない用語や略字,容易に判読できない悪字,筆圧が弱く薄すぎる字などが散見される点については,大いなる反省を求めたい。


【平成23年公法系科目第1問から抜粋】
答案の書き方に関する一般的な注意
・ 常に多くの文字数分も行頭を空けていて(さらには行末も空けている答案もある。),1行全てを使っていない答案が,多く見受けられた。答案は,レジュメでもレポートでもない。法科大学院の授業で,判決原文を読んでいるはずである。それと同様に,答案も,1行の行頭から行末まできちんと書く。行頭を空けるのは改行した場合だけであり,その場合でも空けるのは1文字分だけである。
・ 採点者は一生懸命読み取るように努力をしているが,悪筆や癖字,さらには,字が細かったり薄かったりして,非常に読みにくい答案が少なくない。もちろん,達筆でなければならない,ということではない。しかし,平素から,答案は読まれるために書くものという意識を持って,書く練習をしてほしい。

【同年民事系科目第3問から抜粋】
5 その他
 試験の答案は,人に読んでもらうためのものである。読み手に読んでもらえなければ何を書いても意味がない,という当たり前のことを改めて強調しておきたい。毎年のように内容以前の問題として指摘していることであるが,極端に小さな字や薄い字,書き殴った字の答案が相変わらず少なくない。もとより字の巧拙を問うものではないが,読み手の立場に立って読みやすい答案を作成することは,受験者として最低限の務めである。読み手に理解されなければ何を書いても評価されないことを肝に銘ずべきである。平成22年の「採点実感等に関する意見」で注意を喚起した結果,一般に使われていない「蓋し」や「思うに」を使用する答案が減少したことは評価したい。しかし,「この点,」という言葉を「この」が何を指すのか不明確なまま接続詞のように多用する答案など,不適切な表現を使用する答案はなお多く見られるので,引き続き改善を求めたい。
 問題文を無意味に引き写している答案も少なくないが,これは,時間と答案用紙の無駄遣いである。
 なお,採点実感からすると,合格者の答案であっても「一応の水準」にとどまるものが多いのではないかと考えられる。当然のことであるが,合格したからといってよくできたと早合点することなく,学習を継続する必要がある。

【同年刑事系科目第1問から抜粋】
(4) 丙の罪責について
 ここでも,第1場面において,丙が甲の胸付近を強く押した行為に正当防衛が成立するか否かについて,冗長に論ずる答案などが見られた。前述したように,全体の答案構成を見据えて,適切に濃淡を付けた答案作成を心掛けるべきであろう。
 また,法律用語の使い方の問題として,丙が最終的に不可罰であることについて,「無罪」と表現する答案が少なからず見受けられた。「無罪」は公訴提起された事件について判決で言い渡されるものであり(刑事訴訟法第336条),刑事訴訟法の正確な理解が求められる。
(5) その他
 少数ではあるが,字が乱雑なために判読するのが著しく困難な答案があった。時間の余裕がないことは理解できるものの,採点者に読まれることを念頭に,なるべく読みやすい字で丁寧に答案を書くことが望まれる。



【平成24年公法系科目第1問から抜粋】
(5) 答案の書き方等
・ 地方自治法第242条の2第1項第4号の「第1項」が記載されていないものや,憲法第20条と記載して,同条第1項なのか第3項なのか不明なものなど,条文操作ができていない答案も散見された。
・ 答案を書く上で,適度に項を分け,それぞれに適切な見出しを付けることは望ましいと言えるが,内容的に区分する意味がないにもかかわらず,過度に細かく項目を分けている答案がかなり見られる。
・ 例年のことであるが,字の細かさに線の細さや薄さが加わり,字が読みにくい答案が少なくなく,また,訴訟代理人を「弁護人」等と誤って記載するなど誤字・脱字の目立つ答案もあった。「時間との闘い」という部分で字が乱雑になってしまったり,誤字・脱字があり得ることは理解するが,やはり丁寧な字で正しい文字を書くことは基本的なマナーである。受験者は,答案は読まれるために書くもの,という意識をもってほしい。
・ 「受験生へメッセージを送る」というコンセプトで公表している採点実感を受験生が読んでくれていると思える「改善」が見られることを喜びたい。例えば,行頭を(あるいは行末までも)非常識に空けて書く答案に対して,1行をきちんと使って書くことを求めてきたところ,今年は,そのような答案が少なくなってきた。また,自動的に答えが出るかのような「当てはめ」という言葉を使わず,「事案に即した個別的・具体的検討」をきちんと行うことを求めてきたところ,この点にも改善の傾向が見られた。

【同科目第2問から抜粋】
4 採点実感
以下は,考査委員から寄せられた主要な意見をまとめたものである。
(1) 全体的印象
・ 字が乱雑で判読困難な答案が相変わらず多かった。雑に書き殴った字,極端に小さい字,極端な癖字など,読まれることを全く意識していないかのような答案が相当数あった。例年繰り返し指摘しているところであり,受験者には読み手を意識した答案作成を心掛けるよう,強く改善を求めたい。
・ 誤字・当て字が多く,中には概念の理解に関わると考えられるものも少なくなかった(例えば,換置処分,土地収容,損失保障など)。このような誤字の多用は,書面作成の基本的能力についても疑問を抱かせることになる。
・ 結論を示さない答案が少なからず見られた。問題文をよく読めば,最低限,両論併記で済ませてはならないことが理解されるはずである。
・ 時間不足になったと思われる答案や,論理が何度も逆転した上に,唐突に結論が述べられているような非常に読みにくい答案が散見された。時間配分や答案構成の在り方に問題があったのではないかと思われる。
・ 問題文を正確に読まなかったのか,前提を誤解したり,設問の指示に従っていない答案が散見された。また,問題文から離れた一般論・抽象論の展開に終始している答案も少なからず見られた。まずもって,設問を正しく理解した上で答案を作成することが求められる。
・ 設例や会議録から事実や発言を抜き出してつなぎ合わせただけの,検討の実質が伴わない答案や,具体的な検討要素となるべき事実を単に羅列しただけの答案がかなり多く見られた。

【同年民事系科目第1問から抜粋】
(4) 全体を通じ補足的に指摘しておくべき事項
 特定の設問ということでなく,答案の全体から感じられたことについても,幾つかの指摘をしておきたい。
 答案の中に,少数ではあるが,受験者の極めて優れた分析能力や考察能力をうかがわせるものが見られる。旧司法試験の制度の下で見られたように,法学教育は学部までで終了し,その後の司法試験受験のためには,受験者の関心が受験準備のマニュアル的な訓練ばかりに向かいがちであった仕組みの下では,このような答案は現れなかったものと思われる。
 半面において,細かく観察すると,法律家として将来において実務に就くという目的意識とは距離のある文章作成の感覚も,遺憾ながら見られる。接続表現が,譲歩でなく単に逆接である場面で見られる「そうであっても」,「そうとしても」という言葉や,仮定でなく単に順接である場面で用いられる「とすると」,「そうであれば」という表現の頻用は,不自然である。法律家として将来において作成することになる裁判書や準備書面は,「しかし」,「したがって」,「そこで」などの一般の人々も理解しやすい平易な表現で書かれることが望まれるし,答案も,そうであってほしい。
 法律家が書く文章ということでは,さらに裁判書や準備書面は,当然と言えば当然のことであるが,他人に読んでもらうものである,という前提がある。自分が手控えとして残しておくメモとは異なるものであり,答案も,それらと同じであるべきであるから,その観点からの注意も要る。「債ム」などという略記や略字,時的因子を示す際に「平成」を示す記号であると見られる「H」という略記などは,いずれも自分のみが読むメモであるならばあり得ることであるが,答案などにおいては好ましくない。なお,字が小さ過ぎて,かつ潰れたように記されているため判読が困難であるものも,まれに見られる。
 答案の分量やそれと密接に関連すると見られる答案作成の時間配分の問題については,設問3が考察不足に終わった答案の中に,設問1で不必要なことを書いたために時間を費やしたとか,どうしても設問1及び同2を書き過ぎてしまうとかといった原因を抱えていると推測されるものが見られる。受験者は,各設問に対応する解答の分量を考えるとき,示されている配点の割合を参考にすると良い。

【同科目第3問から抜粋】
5 その他
 従来から指摘しているとおり,試験の答案は,人に読んでもらうためのものである。司法試験はもとより字の巧拙を問うものではないが,極端に小さな字や薄い字,潰れた字や書き殴った字の答案が相変わらず少なくない。各行の幅の半分にも満たないサイズの字を書いているのでは小さすぎ,逆に,全ての行を文字で埋め尽くしている答案も読みづらい。いずれについても改善を求めたいところであり,ここに挙げたような問題点に心当たりのある受験者は,相応の心掛けをしてほしい。
関連記事

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://ogmomomanami.blog.fc2.com/tb.php/3292-80489033
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

Appendix

アクセスカウンター

フリーエリア

Extra

カレンダー

10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -

最新記事

カテゴリ

検索フォーム

QRコード

QR

天気予報


-天気予報コム- -FC2-