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事例問題(解答編①)

甲は、平成26年10月24日、岡山市内において、甲の母乙から現金500万円を詐取した。乙は、同年12月24日、死亡した。乙の子である丙は、乙が死亡した後、甲が乙から現金500万円を詐取した上記の事実を知り、弁護士である貴方に甲を詐欺で告訴する件を依頼した。なお、今回は検察官宛に告訴するものとする。

【設問1】 丙から依頼を受けた弁護士として、甲を詐欺で告訴するにあたって注意すべき問題点は何か。
【設問2】 検察官が告訴を受理しないと判断した場合、対抗策があるか。

今回は【設問1】について考えてみることにします。「関係しそうな条文はすべて書き出せ。」と言われていた検察教官の言葉に従えば、次の条文を書き出すことになるでしょうか。

刑法246条1項(詐欺)
現金500万円があれば、それなりの物を手に入れることができます。そのため、現金500万円を得たことは「財産上の利益」を得たことにあたるとして2項詐欺の成否を検討したら、司法試験に合格しないと思います。

ところで、「詐取」、「騙取」というのは、詐欺の場合に使用する法律用語です。そして、私は「奪取」と書かれると、強盗を連想するのですが、模範六法の恐喝(刑法249条)のところを見ると、「被恐喝者が畏怖して黙認しているのに乗じ、恐喝者が財物を奪取した場合にも、本罪は成立する。」とした判例があるようです。嫌な判例です。また、「殺害」とあれば、これは殺人の場合に使う法律用語ですから、大きな論点として「殺意の認定」があるとしても、その問題では殺人についてグダグダ認定する必要はありません。

同法251条が準用する244条1項(親族間の犯罪に関する特例の準用)
親告罪の場合、一定の例外を除き、告訴期間が定められています。したがって、検察事務官から「先生、告訴期間を過ぎてます。」と言われて、ハッとするようではいけません。なお、本件は親告罪ではありませんでした。それから、刑法が親族間の犯罪に関する特例を設けた趣旨くらいはきちんと書けるようになっておきたいものです。

また、配偶者、直系血族との間で所定の罪を犯した場合、同居していることは要件となっていません。したがって、問題文に同居していると書かれていても、法律の適用にあたって、同居している配偶者、直系血族と書くのは誤りです。なお、前述したとおり、刑法が親族間の犯罪に関する特例を設けた趣旨くらいはきちんと書けないと話になりませんが、法律を適用すれば(簡単に)結論が出る場合にまで法の趣旨を書く必要はありません。この点、家庭裁判所が選任した成年後見人が、被後見人の財産を着服した場合、成年後見人と被後見人との間に所定の親族関係があっても、これに特例に関する規定をそのまま準用していいかが問題となるからこそ、きちんと法の趣旨に遡った論述が必要となるのです。

民法725条(親族の範囲)

刑事訴訟法230条、231条2項(告訴権者)

同法241条1項(告訴の方式)
「告訴…は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員にこれをしなければならない。」とされています。したがって、告訴状の宛名が検察庁、警察署署長になっていたら、?ですね。

同法235条1項本文(親告罪の告訴期間)

同法250条2項4号(公訴時効の期間)
公訴時効が完成していることを見落としたら、大変なことになります。「以下」、「未満」といった言葉の違いも重要です。

同法248条(起訴便宜主義)
検察官が行う事件の処理は、終局処分と中間処分に分かれています。終局処分のうち、訴訟条件を具備する場合、犯罪の嫌疑があるのに不起訴処分にする際は、刑の免除か起訴猶予という理由になります。刑の免除は、被疑事実が明白な場合において、法律上刑が免除されるときにあたると認められた場合に不起訴処分にする理由です。

同法334条(刑の免除の判決)
「被告事件について刑を免除するときは、判決でその旨の言渡をしなければならない。」
どのような場合に刑が免除されるかについて、模範六法の参照条文を確認しておく必要があります。そして、刑が免除されるのは必要的な場合と任意的な場合があり、刑事訴訟法は刑が免除されるような事案について、検察官が公訴提起することを予定しているといえます。つまり、刑が免除されるのが必要的な場合であっても、検察官が公訴提起すること自体は違法とならないと解されます。


それでは、必要的に刑が免除されるような事案について、告訴できるのでしょうか。「告訴」とは、犯罪の被害者その他一定の者が、捜査機関に対し、犯罪事実を申告して、その訴追を求める意思表示を意味し、告訴状には、犯罪事実に続いて、厳重な処罰を求めると書くことになっています。個人的には、告訴の意味と刑の免除の意味をきちんと理解し、本事例はそれらが問題になる場合であることを指摘して、一理屈こねておけば足りると思います。「先生、告訴の意味が分かっていますか。刑が免除されることと矛盾しませんか。」と質問されて問題点に気付き、答えに窮する事態は避けたいところです。
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