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捜査の落とし穴(2)

「対向犯」という概念があります。2人以上の行為者の相互に対向する行為の存在が必要とされる犯罪を意味しており、片方だけが処罰の対象となる場合もあれば、双方が処罰の対象となる場合もあります。前者の例としてはわいせつ物頒布があり、後者の例としては覚せい剤の譲渡、譲受があります。

以前に、覚せい剤の譲渡か譲受のどちらかについて、無罪の判決が言い渡されたことがあります。元々覚せい剤は白い結晶粉末で、パケと呼ばれるビニール袋に入れた状態で密売されており、某が扱ったものか名前が書いてあるわけではありません。覚せい剤をめぐる捜査でも客観的な証拠を重視しますが、密行性のある犯罪であるため、関係者の供述(「発見された覚せい剤は、平成×年×月×日、×市内の路上で、甲から○○万円で譲り受けたものの残りです。」)を頼りにせざるをえない反面、その供述がどこまで信用できるかの問題がついて回ることになります。そのため、上記のような関係者の供述を疎明資料として、被疑者宅の捜索差押許可状の発付を得て捜索を実施したところ、覚せい剤が発見されたり(覚せい剤の所持)、被疑者が任意に尿を提出し、その尿から覚せい剤の成分が検出されたら(覚せい剤の使用)、あえて無罪となる危険性の高い譲渡、譲受は立件しないことが多いと思われます。

ところが、本件では譲渡か譲受で起訴された被告人が、その事実を争ったことから、対向犯である者(乙とします。)が証人として尋問されたものの、その供述の信用性に疑問があるとして無罪になったのです。無罪の最後の方の理由が対向犯である乙について立件されていないため、捜査官の利益誘導があった可能性がないとはいえないとなっていました。

覚せい剤を使用する者は、その直前に覚せい剤を所持しているはずです。そして、自ら覚せい剤を製造する者は稀でしょうから、誰かからこれを譲り受けたはずですし、当然、譲り渡した人間もいたはずです。もちろん、覚せい剤の使用だけが起訴された場合よりも、その所持や譲受が起訴された方が犯した罪が多くなるため、少しは刑に影響するかもしれません。

この無罪判決を検討した結果、対向犯の関係にある覚せい剤に関する犯罪については、警察に必ず立件させて検察官に送致させ、検察官が処分することになりました。例えば、甲を覚せい剤の譲渡で逮捕した場合、その譲り受け人である乙がすでに覚せい剤の使用や所持で起訴されたり、確定判決を受けていても、甲に対して適正な判決を得るために、乙の余罪として譲受を警察に立件させて検察官に送致させ、起訴済みの使用や所持の罪で乙を処罰することによって刑政の目的は達するので、その余罪である譲受はあえて起訴の要なきものと認めたとして不起訴処分にする運用がなされました。ただ、いつの間にか、その運用はなくなりましたが、警察官、検察官としては1件処理した事件数が増えてよかったかもしれません。

裁判所が、無罪や検察官に不利な判決を言い渡す場合、事実が客観的な証拠と矛盾することが判明したという理由が最大のものになりますが、最後の方は結論に向かって取って付けたような理由になっているように思います。
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平成25年5月、アメーバ・ブログから引っ越してきました。役に立つことも、役に立たないこともマイペースで書いています。日記のような感じでしょうか。

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