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捜査の落とし穴(1)

検察官は、(目の前にある)事件の一部だけを見て、その処理に追われていると、思わぬところで足をすくわれ痛い目に遭います。いくつかの例を挙げてみます。

ナイフを持っていた犯人が、警察官2名(甲、乙)から職務質問を受けた際、逃走しようと企て、両名に怪我がさせたとします。警察官甲は腕を怪我しましたが、その供述によると、ナイフを避けて体をねじったために生じたのであって、そうでなければ人体の枢要部である胸付近を怪我していたはずであるというものでした。警察官乙は、ナイフで体のどこか(人体の枢要部ではありません。)を怪我しましたが、警察官甲のような事情はありませんでした。検察官は、警察官甲に対する殺人未遂、警察官乙に対する傷害で起訴しました(その他に、公務執行妨害、銃刀法違反でも起訴されました。)。

当然のことですが、警察官甲に対する殺意の有無が争われました。犯人の心理からすると、警察官に捕まらないで逃走するために必死であり、警察官甲には殺人の故意をもって、警察官乙には傷害の故意を持ってという具合に、うまく立ち回れる状態になかったはずです。本件を審理した裁判所(合議体)は、警察官甲に対しては殺意がなく、傷害と認定しました。もちろん、警察官乙に対する傷害はそのまま認定されました。殺意が否定された理由はいくつかありましたが、最後の方に検察官の起訴の仕方がおかしいというのがあったのを記憶しています。
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コメント

[C2027] 私なら・・・

この件は起訴の仕方の問題と言うよりも事実の掘り下げが足りなかった事案だと考えます。これを警察官2名ではなく、正義感から犯人を取り押さえようとした一般市民2名の事案と考えればより分かりやすくなります。もし犯人が、自分を逮捕しようと迫ってきた甲を咄嗟に刺し殺しても逃亡しようと本能的に考えて攻撃し、甲が咄嗟に身をかわしたので助かった、他方乙はそのとき未だ犯人の近くに迫っていなかったので、威嚇的にナイフを振り回してかすり傷を負わせたという事案であれば、殺人未遂+傷害罪の事案で問題ないとなります(瞬間的にせよこのような犯意が生じることは十分考えられます。)。この場合、こうした細かい事実の可能性も考えずに、両方傷害で起訴したら、犯人逮捕に協力して死ぬかも知れないという恐怖を味わった甲氏に対して(特にこの方が一般市民であれば尚更)極めて失礼だと思いますし、甲氏に対し、捜査や裁判に対する徹底的な不信感を与えることになりかねません(自分は殺されかかったのに、検察庁も裁判所も全然信用してくれないんだ、これが世の中の現実か、と)。もちろんこうした細かい事実を解明した上で、なお、甲氏に殺人未遂、乙氏に傷害というのは不自然という結果となれば、それこそが真相だといういことになりますから、真実に即して、傷害事案2件として起訴すべき事になります。私自身、冤罪を防ぐことはもちろん大事ですが、同じくらいに、被害に遭った人に対しても、その被害を漏らすことなく解明して救済すべきと考えます(いわば「逆冤罪を防ぐ」とでも言うべきでしょうか)。この2つの相反する要請を何としても充たすために身を削るのが我々プロの法曹を名乗る者の使命だと考えます。本当はこうしたことも、司法修習生やロースクールの学生に学んで欲しいのですがね。
  • 2014-07-12 09:53
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平成25年5月、アメーバ・ブログから引っ越してきました。役に立つことも、役に立たないこともマイペースで書いています。日記のような感じでしょうか。

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