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雲上人(1)

元検事総長の吉永祐介さんが亡くなりました。私にとっては雲の上の人、つまり、雲上人でした。

吉永さんは、捜査の第一線、現場でその手腕を発揮された方であると理解しています。それほど現場を踏むことなく、法務省(いわゆる本省)勤務が長い官僚めいた検察官が出世するのが検察の世界の慣行でした。したがって、吉永さんが検事総長になられたのは珍しいケースであり、いろんな力が働いて、うまくお鉢が回ってきた感があったと思いますが、検事総長になるに値する人物であったことは間違いないでしょう。



吉永さんが大阪高等検察庁の検事長をされていたときのことです。別の記事で取り上げていますが、滅多にあることではありませんし、検察の体質を知る材料となりますので書いていきます。なお、私の同期の検察官を甲、乙とします。


甲は、別の検察官が研修で出張するため、判決だけを聞いてきてもらえないかと依頼され、これを承諾したのですが、検察のルールには問題判決があった場合、判決を聞いた検察官が処理をするというのがあるのを理解していなかったようです。判決は、被告人を懲役6月に処するというものでした。そのときの気持ちについて、甲は、一瞬、違う判決を聞きにきたと思ったと言っていました。なぜなら、検察官の求刑は懲役2年であったからです。ところが、主文の後に説明される、裁判所が認めた罪となるべき事実が起訴状の公訴事実と同一であったことから、自分が聞きにきた判決に間違いはないと分かったのです。私は、安易に判決言渡しの立会を交代したら、酷い目に遭うことがあると知りました。この判決については、量刑不当を理由に検察官控訴しました(以下「第1事件」といいます。)。控訴趣意書は甲が起案することになりました。先日、検察官が懲役15年を求刑した裁判員裁判で懲役9年の判決が言い渡されました。軽いなとは思いますが、こちらは検察官控訴することはないと思います。しかし、第1事件は求刑の4分の1ですからね。


次に、本来は9月までに判決が言い渡されるはずの事件(後任に引き継ぐ嫌な検察官がいるのです。shadowさんとは正反対です。)について、刑事部から公判部に異動した甲が判決をもらいました。数千万円の業務上横領で、被害弁償していないにもかかわらず、将来被害弁償しますとの被告人の言葉を重視した結果、刑の執行が猶予されました。横領した金員を穴埋めに使っていたり、横領される側にも被害に気付かなかった落ち度があるのですが、普通の裁判官に当たっていたら、当然実刑の事案です。これも量刑不当を理由に検察官控訴となり(以下「第2事件」といいます。)、甲が控訴趣意書2通を起案するのは大変だろうということで、乙にお鉢が回ってきました。問題は、第2事件の記録が大量(分冊で20数冊になっていたと思います。)であるため、経験の浅い乙がこれに目を通して控訴趣意書を書くのは大変であろうから、乙は第1事件、甲は第2事件の各控訴趣意書を起案せよとなりました。


私は、普通に仕事をしていました。私ならば、乙と違って、降って湧いたような控訴趣意書の起案を引き受けたりしないなと思っていました。そして、第3事件がないことをひたすら祈っていました。初めて痛風の発作に襲われたのは、この時期であったと記憶しています。
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平成25年5月、アメーバ・ブログから引っ越してきました。役に立つことも、役に立たないこともマイペースで書いています。日記のような感じでしょうか。

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