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控訴趣意書の起案について(1)

控訴すると、裁判所から控訴趣意書の提出期限が決められて通知されます。


この提出期限を徒過しますと、控訴を棄却されますので、絶対に提出期限を守る必要があります(なお、弁護人でも同様であり、控訴趣意書の提出期限を徒過したら、懲戒処分を受けます。)。検察庁の場合は、得意の決裁がありますので、その提出期限から逆算して、末端の検察官が控訴趣意書を起案して、直属の上司に提出しなければならない日が決められます。


まず、やるべきことは似たような事案の控訴趣意書を集めることです。見たことがありませんので、当然のことですが、書いたこともありません。先輩の真似をするのが一番です。刑事事件の場合、原審が簡裁、地裁にかかわらず、控訴審は高裁で審理しますので、その高裁管内の先例までを射程距離にして、検索するいくつかの条件を設定すると、大体数件の控訴趣意書が手許に上がってきます。


これを読んでみて、どういうことを書けばいいのか、どんな書き方をすればいいのかを検討します。たしかにすごいです。控訴趣意書を読めば、すべて分かります。高裁の裁判官は、事案の内容、今後の見通しが頭に浮かぶはずです。

控訴趣意書の起案について(2)

控訴趣意書を起案するにあたって、類似の案件の控訴趣意書を集めることは(1)で書かせてもらいました。


その他に、控訴審で新たに主張する事項についての補充捜査をしなければなりません。分かりやすい例を挙げると、交通死亡事故で判決の量刑が著しく軽く不当であるとして控訴した場合、被害者の遺族の方から判決を聞いての心境を聞き、供述調書に録取することが考えられます。


このとき、遺族の方が、検察官からの連絡を「待ってました。」という感じの場合は助かるのですが、その逆の「もうそっとしておいてくれ。」となると、暗礁に乗り上げることになります。私の場合は、前者の方でした。そのため、いざ控訴趣意書の起案となったとき、「やったるでー。」という気持ちになったのを憶えています。


期限を遵守するのが大事ですから、それなりに形を整えて、上司に控訴趣意書を上げます。上司の手が入って、戻ってきます。さらに、その上の上司が検討して、原庁としての控訴趣意書が出来上がります。


ここまで来ると、私が書いた控訴趣意書の原型はなきに等しい状態になっています。ところどころ残っている部分があるのですが、それは集めた控訴趣意書に書かれていた文章を引用したもので、私が考えたものではなかったのです。


そして、ここから、高検が口を挟んできます。


高検の検事が控訴審の公判を担当するのですから、口を挟むのは当然のことかもしれません。しかし、一応、(支部長、)次席検事や検事正が目を通されている文章に、自分の好みで手を入れたりするのです。それによって、前に書いていた文章が復活することも稀ではありませんでした。怒った上司が、「高検の好きなようにやらせろ。」と言われたことがありますが、今でも、自分の好みで文章を変えるのはやめた方がいいと思っています。

控訴趣意書の起案について(終)

高検からOKをもらうと、地検の次席検事が控訴趣意書に署名押印します。このときの署名が下手くそな場合は、控訴趣意書の印象が悪くなりますから、署名だけは練して恥ずかしくないようにすべきです。


ご苦労さんという意味でしょうが、地検の末席で控訴趣意書の起案を担当した私にも、写しが一部配付されました。


読んでみて感動したのを憶えています。私が起案した最初のやつは一体何だったのかと思いました。


控訴審の裁判官が控訴趣意書だけを見たらいいように、一審が認定した事実、量刑の理由までそのまま書いてあり、後者については反論を加え、さらに一審の判決が不当な理由が列挙されていました。また、検察という組織だからできるのでしょうが、同種事案に関する判決の検討結果も付いていました。


もっとも控訴趣意書の内容がいかによく書けていても、また、どんなに量をとって書いていても、無罪になる事件は無罪であって、要は証拠の問題であることに変わりはありません。


それから、悪いことをする人はまた悪いことをします。そのとき、前の判決が証拠で出てくるのですが、例えば、控訴審まで争った事件の場合、控訴審の判決において、争点は控訴趣意書を引用する形をとっていることがあります。その場合、控訴審の判決に控訴趣意書が添付されていることがあるのですが、弁護人が作成した控訴趣意書の中にはお粗末なものがありますね。あまり手抜きをすると、どこで笑われるか分かりません。


事実誤認、量刑不当を理由に検察官が控訴した控訴趣意書を持っておくと、勉強になりますね。

刑事控訴審について(1)

裁判員裁判で地方裁判所が懲役12年とした傷害致死の事案について、高等裁判所が刑が重すぎるとして懲役8年を言い渡したという報道に接しました。裁判員裁判の一審を尊重するといって憚らない高等裁判所としては、珍しい結果であると思います。


そこで、刑事の控訴審について書いてみたいと思います。


刑事裁判については、地方裁判所が裁判員裁判を実施するようになったことから、以前に比べると、国民の皆さんに身近なものになったかもしれません。


ところが、刑事事件に関し高等裁判所が行う控訴審については馴染みがないと思います。場所によっては、地方裁判所の所在地に高等裁判所の支部すらないところがあります。例えば、宮崎であれば、福岡高等裁判所宮崎支部がありますが、奈良にはそのような支部はなく、控訴審では大阪高等裁判所まで足を運ぶ必要がありますね。


まず、刑事事件における控訴審のスタンスは、原審での弁論終結時に表れていた証拠に基づいてなされた原審の判決の当否を審査するというものです(事後審)。


そして、量刑不当を控訴理由とする場合(検察官が控訴した場合は軽すぎる、被告人や弁護人が控訴する場合は重すぎる。ここでは、後者を前提に論述します。)、裁判を担当する裁判官の人生観、事件に対する見方等がある程度影響することは否定できず、この事件は懲役○年という感じで決まっているわけではありません。



つまり、判決にもある程度の幅があるという前提で刑事裁判は運用されています。この幅を超え、どう見ても刑が重いよなと思える場合にはじめて、量刑不当を理由に原判決が破棄されることになります。

刑事控訴審について(2)

刑事控訴審の構造が事後審(原則)であることは、前回のブログに書きました。


つまり、控訴審は、弁論終結時点における証拠を基にして、原審の判断が正しいかどうかを判断することになります。そうしないと、控訴審になって証拠を提出し、新たな主張をすればいいと考え、一審を軽視する輩がいるからです(後出しジャンケンですね。)。一審の審理を充実させるためにも、事後審ということは徹底されなければなりません。


しかし、原審では証拠を出すことができず、決して一審を軽視したわけでもないし、却って、原審判決後に生じた事情を考慮しないことが正義に反する結果となる場合もあるでしょう。その場合は、事情を説明すれば、新たな証拠調べを許してもらえます。当然、控訴趣意書の中に、その内容を盛り込み、裁判所に証拠調べの必要性と一審を軽視したわけではないという事情を書いておきます。


大概の裁判所は、被告人質問くらいはやらせてくれるようです。裁判所によっては、結審して、即時判決をするところがあると聞いたことがあり、このような裁判所ですと、裁判の前から結論は決まっていて(もっとも、他の事件であっても控訴趣意書を読んだ時点で、見通しを立ててます。)、被告人質問は、まさに儀式の一環にすぎないということになります。


ただ、前にも書きましたが、被告人質問をする場合も、原審で質問した内容と重複することは許されませんから、裁判長から「具体的には、何を聞かれますか。」と確認されます。その場合は「原判決後の被告人の反省状況です。若干質問させて下さい。」と言えば、許してもらえると思います。


しかし、事実を争っている場合であっても、裁判所が全く相手にしてくれず(裁判所の心証は事実を争うことがおかしい。)、弁護人が被告人質問で事件のことを質問すると、これを制止した上、それでも被告人質問をしようとすると、却下されて被告人質問自体をさせてもらえないことさえあります。


どうしても調べてほしい証拠(証人)があれば、控訴趣意書に書くだけでなく、事実取調請求書も提出し、さらに、証人であれば控訴審の第一回公判に在廷させておく必要があると思います。


以上の記述からも明らかであると思いますが、通常の刑事事件の控訴審は、あまり仕事をさせてもらえないところです。このことは、法テラスの報酬基準を見てもらえば分かります。


さらに、一審が裁判員裁判の場合には、公判前整理手続が終了した時点で、証拠調べ請求について制限がかかりますし(316条の32第1項。「やむを得ない事由によって…請求することができなかったもの」)、控訴審は一審の裁判員裁判の判断を尊重する姿勢を堅持しているので、控訴審では、余程のことがあっても、証拠調べ請求は認めてくれないと思います。


私の記憶では、裁判員裁判で無罪となった覚せい剤取締法違反等の控訴審で、裁判所は控訴した検察官の証拠調べ請求をすべて却下したと思います。ということになると、一審と全く同じ証拠で、あえて裁判員裁判が下した評価と異なる評価をするとは考えにくいですから、控訴棄却(無罪)になるのでしょう。


被告人、弁護人が控訴した事案では、尚更、相手にしてもらえない気がしてなりません。

ボランティア判決

今朝の新聞に、大麻取締法違反の罪により一審で懲役1年6月の実刑判決を受けた被告人が、震災後にボランティア活動をしたことなどの理由から、控訴審で原判決が破棄され、懲役2年・5年間執行猶予になった記事が掲載されていました。


この被告人に前科があるかどうかは分かりませんが、大麻取締法違反で実刑になるということは、通常前科がなければ考えられないことです。また、執行猶予期間中で、再度の執行猶予を付けるとしたら、1年以下の懲役にする必要がありますので、執行猶予期間中ではなかったのです。さらに、執行猶予期間は最長5年ですから、この被告人は最長の期間ということになります。


ボランティア活動を評価する、大阪らしい発想ですね。


以前、判決宣告期日を延ばし、被告人に震災のボランティアに行くよう指示した裁判所がありました。指示に従ってボランティアに行けば、いいことがあるのは明らかです。検察官は、迅速な裁判の要請に反すると主張したように記憶しています。


ボランティアや募金は自発的に行うところに意味があるのであって、何か見返りがあったら、意味がないように思います。そう言えば、受刑者からも義捐金があったようで、受刑者の自発的な意思に基づくこと、それをもって受刑中の評価に影響しないことを強調していましたが、本当かなと思いますね。

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Author:オグちゃん
平成25年5月、アメーバ・ブログから引っ越してきました。役に立つことも、役に立たないこともマイペースで書いています。日記のような感じでしょうか。

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